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トレーでのやり取り

 コロナ禍で、レジで直接お金をやりとりせず、トレーに入れてやり取りすることが当たり前になってきました。カードなどもお店の人が触らないですむように工夫されてきています。公共図書館だけでなく学校図書館も返却後に本を拭くことが常態化し、職員と直接やり取りしないような工夫をする図書館も他府県で見受けられるようになってきています。

 そんな中で絵本の読み聞かせはどうなっていくのだろうと考えます。

 元々、絵本の読み聞かせは、集団ではなく、親子や親しい間柄の読み手と聞き手が隣り合って楽しむのが本来の形だと思います。この関係性の中では、接触を避ける発想は生じず、今回の状況でも問題になりません。

 一方、私たちが行ってきた集団に対する読み聞かせは、三密を避ける今の状況では、避けるべき行動になります。

 では私たちがやってきた事は、不要不急のものかというと、それも違うと考えます。私たちが図書館や保育園などで読み聞かせをする理由は、人には物語が必要だと思うからです。そして物語を楽しむためには、読書することを日常化することが重要で、その入り口として、絵本やストーリーテリングが大事だと考えるからです。活字が読めれば読書できるわけではない事は、日本の識字率と不読者の増加が示しています。

 だからと言って、三密を避けるために動画で読み聞かせを配信することが、物語を楽しむ力を育むかといえば、それも違うのではないかと考えます。聞き手が個で楽しむなら生活を共にしている人に読んでもらった方が聞く方の満足感が違うからです。

 私たちは、子どもたちと集団で聞くからこその楽しみ方を共有してきました。そして子どもたちが物語の楽しみを育んでいくために必要なことを、絵本を選び、聞いて確かめることで感じてきました。今、読み手として過ごしてきたことの整理と発信の時期なのだと思います。