物語に身をまかせる

 ストーリーテリングの聞き方のお手本は、子どもだと思います。

 語られたことに疑問を挟まず、素直に物語の展開に寄り添って、そんなこともあるんだという受け止め方をしてくれます。内容を評価しないというか、価値観を紛れ込ませない、物語の世界と現実世界を混ぜない感じがします。

 翻って、おとなは、無意識に物語の世界に現実世界を投入する傾向があります。そのため物語の設定を無視して、現代的な感覚で残酷だなどの価値観が紛れて、物語を純粋に楽しめなかったりします。

 また、ストーリーテリングを聞くおとなは、圧倒的に語り手が多いので、語られる物語ではなく、語り方に注目して聞いてしまうことも多々あります。

 結果、面白いお話だったではなく、上手な語りだったという感想になったりします。

 このおとなが陥りがちな聞き方は、ストーリーテリングを楽しむ上で、本当にもったいないことだと思います。

 ストーリーテリングは、どう物語が伝わるのかを知って語るのと、知らずに語るのでは、仕上がりが違うからです。

 おとなの感覚は、物語を楽しむ上では雑念でしかありません。物語に身をまかせて丸ごと物語を受け止める事が、語り手にとって語る近道です。

 しかしおとなが、物語に身をまかせるのは、慣れないと難しいことのようです。読書は物語と自分が向き合い、考える作業が含まれるので、読書好きほど

無意識に物語に自我を投入してしまう事と、おとななってからストーリーテリングを初めて聞いたという人が多いからだと思います。

 そこで、語り手がストーリーテリングを聞くときは、意識的に考えることを遮断して、物語にとどまると、物語に身をまかせた子どものように聞く状態が作れると思います。

 おはなし は、最初から物語に身をまかせられる人と苦手な人がいます。ご自身がどちらか振り返ってみて、次にストーリーテリングを聞くときに試してみると面白いと思います。