言葉から変換する力

 子どもたちが必死で言葉をイメージに変換していると言いましたが、そこを語り手が意識しすぎると、おはなしのバランスが崩れます。

 ストーリーテリングは聞き手の目を見ながら語るものですから、子どもたちの表情から察して、言葉の一つ一つの理解を助けたくなるのです。

 すると、わかりにくいだろう言葉の説明をしたくなったり、噛んで含めるような言い方になったり、スピードが変わったりします。

 その結果、単語は伝わりやすくなったとしても、物語が見えなくなります。

 言葉と物語の関係は、不思議なもので、言葉が全て理解できるから内容が理解できると言う単純な関係ではないと、ストーリーテリングをしていて思います。

 自分が読書をするときのことを思い返しても、わからない単語があっても立ち止まって辞書を引いて確かめたりはせず、前後の関係で推測して読むことは多々あります。

 そう考えると物語を受け取るときに優先されるのは、物語の流れなのだと思います。もちろん辞書を引いて丁寧に言葉と向き合いたい気分の時もあります。でもそれは、初めて読む本ではなく、何度も読んでいて、内容を知っている本でやっている気がします。

 何度も言っていますが、ストーリーテリングは物語が始まったら、止まれないし、戻れません。大事なのは物語が伝わることです。そして言葉からイメージする力は物語を受け取る体験から磨かれます。

 語り手である私たちは、言葉がわかっているのだろうかではなく、物語の展開についてきているだろうかが、意識すべきとところです。