マスクと新しい距離感

  今年度、マスク着用とソーシャルディスタンスを守った形で、ストーリーテリングを行なってきて、気がついたことがあります。

 ストーリーテリングは、聞き手の目を見て話すのがお約束ですが、実は目というより表情を見ていたんだということに今回気がつきました。マスクで表情が見えないと、思いの外語りにくと感じます。壁に向かって語っている状態に陥りそうになるため、油断すると語り方が派手になっていってしまいます。

 けれど回数を重ねてきて気がついたのは、今までより、しっかり視線を合わせて、目を見るというより見つめると、目が表情を補って語っていることが分かることです。マスク生活の際は、意識的に目をしっかり見る必要があります。

 そしてこれは、語り手にも言えるのだと思います。手振り身振りをつけて語っていないので、表情まで意識していませんが、表情から、聞き手が受け取っていたものもあったのだと思います。語っていて表情を意識するとマスク姿でも聞き手がリラックスするような感じがします。

 それと、新しい距離感の中でのストーリーテリングでは、聞き手が密集できないので、結果集団は、スカスカした塊になります。

 すると今までのように、大きな声を出そうとするのではなく、一番後ろの聞き手に届いているかを意識して語る形では、おはなし が届かない感じがします。

 そこで声の強さというか芯のある声を意識していく必要出てきている気がします。聞きやすいように座り方などで条件を整えられない分、語り手の声にたよる形になるのだと思います。

 ただこれも限界はあって、声をいくら大きくして、聞こえたにしても、広すぎる場所はおはなし を聴く側にも負担がかかります。語り手の意識が聞こえるよう話すことに振れるので、物語の世界観が薄れるのだと思います。

 やはりストーリーテリングは、語り手が物語の世界観を支えることに集中できるよう、語り手に負荷がかからず、自然体で語れる広さの場所と聞き手の人数のところで、聞き手同志は身を寄せ合って聞くことが一番物語が気持ちよく伝わる気がします。

 ただこの状況なので、成り立つ限界を語り手が知っていることは大事だと思います。