語り手が楽だと聞き手が楽に聞ける

 マスク生活で、声が出しにくく、滑舌も滑らかにいかないですが、それだけでなく、語り手が話しやすいと思っていることは、ストーリーテリングの良し悪しに影響していると思います。

 ストーリーテリング以外の例をあげると、音楽やダンス、演劇などの発表会で、楽しんでやりましょうと指導者がアドバイスするのは、演者の気持ちがパフォーマンスに影響するだけでなく鑑賞している人にも演者の気持ちが伝わってしまうからだと思います。表現することは、聞き手や鑑賞する人に受け取ってもらって完成します。鑑賞する人たちは、演者の緊張感すら合わせて受け取ってしまうのです。

 スポーツのように観客も手に汗握って応援するようなシーンでは緊張感もスパイスになります。

 けれど別世界に誘うストーリーテリングや音楽、演劇などは演者の強い緊張感は邪魔になります。

 語り手の言葉と一緒に物語の世界に入って、そこで起こる様々なことについてきてもらうには、聞き手の適度な集中とリラックスが大事です。物語の展開についていくための柔軟性、自然体といってもいいかもしれません。この自然体で聞いてもらうためには、語り手も自然体でいることが必要です。緊張感も不安もない状態で楽に語ることが、聞き手が楽に自然体で聞けることにつながると思います。