一緒に楽しむ ストーリーテリングの場合

 ストーリーテリングも、絵本の読み聞かせと同様に、聞き手と一緒に楽しむために語っています。

 そのために語り手の役割は、物語で起こっていることを、聞き手に伝えることだと思っています。そして物語の世界観をきちんとイメージして、見えるように語るのも、起こっていることを正確に伝えるための方法だと感じています。

 またストーリーテリングは、絵本以上に聞き手を選ばないものだと思います。

 特に昔話は、その成立過程を考えても、子どもたちだけのものではありません。そして聞き手の人生経験によって、見えてくるものが違ったりするおもしろさがあります。

 これは多分、昔話が、おとなと子どもが同席した状態で伝承されてきたことも関係している気がします。昔話の中でも艶話と呼ばれる、性的なものを題材としたものは、子どもたちが同席しない場で、語られてきたようですが、それ以外はおとな子どもの区別なく語られてきたものです。

 この物語が聞き手の心情を誘導せずに、聞き手にまかせる感じは、読書に近い手触りがあります。

 ですから、語り手は、物語の中で起こった事に、私情を交えずに語ることが大事だと思います。

 語り手が物語の展開以外のところに重点を置いて、語ることで伝えたいものができたりすると、物語がいびつになってしまいます。どう感じるかは聞き手に任せて、聞き手が素直に物語の展開に身を任せられるよう語ることが、一緒に楽しむということだと思います。