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季節と絵本

 今日は、1897年以来、124年ぶりの一日早い2月2日の節分だそうなので、行事や季節を、私たちが絵本を選ぶときにどう捉えているのかを整理してみます。

 私たちは、選ぶ基準として、行事や季節をあまり意識していません。

 絵本は絵本として世界が完結していると考えているからです。子どもたちと一緒に絵本の世界に入って、子どもたちと一緒に現実の世界に帰ってくる感じです。

 そのため絵本の中で起こったことを現実世界で再現したり現実世界で確認しなくてもいいと考えています。そしてそのつもりで絵本を選んでいます。

 もちろんごっこ遊びに発展したり、美味しそうなものが出てきたのを再現したりという、絵本の世界と現実世界を結びつけた楽しみ方を否定するわけではありません。

 絵本の世界を楽しんだ後、どう展開するかは、聞き手次第で、私たちが導くわけではないと考えているのです。

 それに私たちのおはなし の会の頻度は、多くても月一回です。毎日読み聞かせをしているわけではないので、ちょうどいいタイミングで行事を取り上げられるわけでもないというのもあります。

 あとは絵本の出版事情も積極的に取り上げない理由の一つです。

 保育園や幼稚園で、絵本を活動の導入に取り上げる機会が多いためか、季節や行事を扱ったものが、毎年その時期に数多く出版されます。需要と供給の原理に則っての出版は、作家がその作品をどうしても書きたいと思ったものだけでなく、まずお題ありきで作家が取り組んだものが混じります。すると、新刊としてアピールできる時期が過ぎると手に取られなくなる使い捨てタイプの絵本も出版されることになります。そのため行事、季節にこだわり過ぎると、この使い捨てタイプのものを多く目にし、追いかけることになりがちです。

 そして満足感が薄くても、季節があっているから、使いたい行事が取り上げられているからということで、何度も読みたくなる絵本かどうかが気にならなくなっていくかもしれないことが、怖いと思います。

 私たちも季節・行事に囚われていた時期もありましたが、読み手の私たちが、感覚を鈍らせるかもしれないことを考えると、季節・行事を積極的に追いかける必要はないのではないかと今は思っています。

 季節や行事の絵本は、探してまで読みませんが、読みたい本があったら読むくらいの気持ちで丁度いいと感じています。