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その感想は誰のもの?

 おはなし の会の直後に感想は聞かないでというお願いをすることがあります。

 感想を持つこと、感想を書くことは、決して悪いことではないと思います。むしろ自分と物語の関係性が客観的に見えて、読書が深まることもあると思います。

 ではなぜ感想を聞かないでとお願いするかと言えば、感想を言うということは自分のためだけではなく、人に聞かせるためにも比重がかかっているからです。

 何を細かいことをと思われるかもしれません。

 けれど物語に浸る場として読書が成り立つためには、ここの線引きは重要だと考えています。誰にも邪魔されない、自分と物語の世界が守られることで、想像力を駆使することや、思考を深めることに、没頭できるのだと思います。なんの制限もなくのめり込めるのも読書の魅力の一つだと思っています。

 自分の考えをまとめて言葉にできるという能力も必要ですし、トレーニングをしていかなければ身につかないというのはわかっています。

 読み聞かせやストーリーテリングを積極的に楽しむ世代は、ひとり読みをしない段階からひとり読みに取り組んでいたとしても自然にできているか微妙な段階です。そのトレーニングが有効かと言えば、疑問が残ります。

 個人的にはひとり読みが当たり前の世代でも直後の感想は望ましいとは思いません。

 自分の体験で恐縮ですが、小学生になって感想文の宿題が出ると、感想文を書きやすい本を読むということをしていました。本は好きでたくさん読んでいるのですが、自分がのめり込んでいる物語で書こうとしても書けないという体験を積んだ上での苦肉の策でした。その時はわかりませんでしたが、書く能力と感じていることが一致しないということだったのではないかと思います。

 そしてこの様に言葉が追いつかなくても感じているものがあることも読書のおもしろさだと思います。感想は自分のものです。出力することを意識せずに存分に楽しんで欲しいと思っています。