イメージ 私の場合

 物語のイメージを固めるという言い方をよくしていますが、イメージを固めるというのは、あえて言葉にするなら、語り手の持っている想像力を使って、物語の場面を頭の中で作る作業だと思います。

 ただ無意識の作業で、意図してやっている感じはあまりありません。

 ですから、私の感じとしては、直接的にある場面を細かく作り上げるというよりは、直観的な感じです。

 物語を読んでぱっと頭に浮かんだ印象を、ストーリーテリングにする際は、何度も読むので、いつも同じ印象に落ち着いていくというか、固まっていくというか、これしかない状態になる感じです。

 これは、あくまで私の場合で、語り手が全て同じ手順でイメージを固めているかと言われれば、わからないとしか言えません。言語化して確認しあったことがないですし、言語化しにくいので、あえてやらないとも言えます。

 何しろイメージは、見えないので確認しようがなく、下手をすると気のもち様と勘違いされ、おざなりにされたりします。

 そして、実感として認識しやすい、声の使い方やテキストを正確に再現できているかというところが優先される場合があります。

 けれど、ストーリーテリングでは、まずイメージありきだと思います。語る際には、声もテキストもイメージから派生されたものだと感じています。

 イメージの豊かさ 確かさが、語られる物語の力を発揮させ、声や言葉が生きてくるのだと思います。

 これは、ストーリーテリングを聞いた時にわかります。イメージが固まっている語り手の「おはなし 」は、楽に聞けます。主人公がどこにいて何をしているのかが伝わってきて、ついて行きやすいのです。そして持っているイメージが豊かな人の「おはなし」は、聞き手の五感にまで訴えるものがあります。聞いていると色を感じたり、匂いを感じたり、音を感じたりします。

 大事なのは、これは表現しようと思って、表現できるものではないということです。

 私にストーリーテリングの手ほどきをしてくださった、藤井早苗先生は、美しいものをみなさいという言い方でそれを教えてくださいました。どう語ろうかより、美術館に行ったり演奏会に行ったり旅行をしたりが大事なのだとおっしゃっていたのを思い出します。

 イメージを固める時には、今持っているもので作るしかないので、日々準備しなさいということだと思います。