一瞬から始まって一瞬に着地

 前回イメージは言葉からぱっと思い浮かんだものが基本という話をしましたが、心惹かれるものや人について思い巡らすことを否定している訳ではありません。イメージの話をする時に、例えば主人公の姿形を定めるという話をよくします。年齢、背格好、髪型、服装などはどんな感じといういい方もします。これは、自分のイメージをくっきりさせるための手がかりです。こうやって一つ一つ確認することで、自分のイメージが固まることが大事なのです。

 例えば「マーシャとくま」ですが、冒頭 むかしあるところにおじいさんとおばあさんが住んでいました で始まります。このおじいさんとおばあさんのイメージを固めるというのは、これロシアの昔話だよね、民族衣装だろうか、ロシアの民族衣装って?と図鑑を調べていくような作業のことを言うのではないと感じています。

 その作業が楽しくてより精度を上げるというか、イメージを膨らませることで語りやすくなるならいいのですが、イメージを固めるということは、おじいさんと言った時にいつも固めてイメージを呼び起こす必要があるからです。

 言葉とセットなのでじっくり時間をかけないと呼び起こせないものは、ストーリーテリングでは使えないのです。

 もちろん時間をかけてイメージを膨らませたことを一瞬で思い浮かべることができる場合もあります。

 ですが、単語一つ一つののことではなく、すごく印象に残ったとか心惹かれると言った場合に限られる気がします。

 私の場合、イメージはどちらかと言うと消去法で固めているかもしれません。

 先程の「マーシャとくま」のくまで説明してみます。

 このくま、とりあえず服は?きていない、姿形は?ツキノワグマみたいに黒くなくて、もっと大きい感じ、毛並みがふかふかしていて、茶色か灰色? グリズリーみたいかもと言った感じで固めていきます。

 この時、ロシアにグリズリーはいないのでは?とか、ロシアに生息しているくまは?という頭の使い方はしていません。

 イメージの話をする時に、絵を描くようにとか、イメージを見て語るとかいう言い方をするので、どんどん情報量を増やす印象が強い方もいらっしゃるかと思いますが、ぱっと思い浮かべることができることが重要です。これはイメージを固める前も、固めた後も一緒です。一瞬から始まって、一瞬に着地している感じです。