聞き手の立場になると、ストーリーテリングは、聞き手同士も影響しあっているのを感じます。
同じことを感じているというより、それぞれが耳を凝らし、目を凝らして、物語についていこうとしている感じになるので、つながっている気がします。
うまく言えないのですが、その場にいる聞き手が自分の中で物語を咀嚼しているので、そっくり同じに受け取っていないかもしれないのに、同時に受け取っていることが、聞くことを容易にさせてくれる感じです。
そう考えると、おはなしの部屋 とか、 おはなし のろうそくは、聞き手の息を合わせる手助けをしているのかもしれません。
おはなしの部屋を持っている図書館は、基本その部屋をおはなしをする時以外には使わず、特別なものとして扱っていることが多いと思います。
それは、その部屋に入ることが物語の入り口になるようにという配慮だと思います。
家庭文庫などで、おはなしの部屋として別の場所がない場合でも、おはなしを始める前に、一旦聞き手が廊下に出て、おはなし 用に部屋を設えられてから、入り直すといった儀式的な決まりを作って、特別感を大切にしていることがあるのも、同じ理由だと思います。
同じように、おはなし のろうそくも、始まりの息が合う、物語の入り口を意識するものだと思います。
ろうそくが灯る瞬間は、おとなでも目が吸い寄せられる感じがありますし、息を詰めて待つ独特の感じは、おはなし の始まりととても似ている感じがします。
おはなしの部屋やおはなしのろうそくを使うのは、子どもが集中するからという言葉で説明されますが、みんなで、さあいくぞ!と気持ちを合わせる効果も感じています。聞き手がひとりじゃないから効果が生まれる仕掛けの一つだと思います。
語り手の方も慣れた手順にならずに、さあいこうという気持ちを忘れずに、ろうそくに火を灯していけるのが、大事だと思います。