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子どもたちにどう受け取って欲しいのか

 おはなしの会をしていると、子どもたちの聞き方はどうだったかと聞かれることがあります。特に出張おはなしの会の時に、一緒に聞いていなかった先生方に聞かれることが多いです。

 こんな時は、私たちが何を目指しているのかを伝えるチャンスだと感じています。どう聞いて欲しいのかを言うのではなく。私たちが良しとしている聞き方が表れていた部分を伝えることができるのです。そして目標への道筋を話すこともできます。今日の聞き方の良いところをお伝えして、でもこれからもっとこうなっていくはずという伝え方は、私たちが何を目指しているのか、理解してもらえる機会です。

 お伝えする際、気をつけなければいけないと感じていることが、ふたつあります。

 ひとつは、言葉に嘘があってはいけないということです。とりあえず、褒めなければと思って、安易に「よく聞いてくれました」という言葉を使わないことです。

 読んで、語ってみて、本当に良かったと感じたことを伝えることが大事だと感じています。

 私たちは、物語を伝えている側です。言葉の力は侮れないことを知っている立場です。毎回、手放しで満足するおはなし の会が成立するわけではありませんが、その中でも良かったところはあるはずです。感度を高めて、良かったことを感じていくことが、語り手としての能力を高めると感じています。

 ふたつめは、私たちが使った言葉が、先生方の次の行動につながることを意識しなければいけない点です。

 「とても静かに聞いてくれました」と伝えたことで、先生が子どもたちに静かにするよう気を配ってくださるようになるとか、「良い姿勢で聞いてくれました」が姿勢を保たせるよう先生が注意して歩きたくなるといったことは、よく起こることです。

 例え、私たちがそんなことを言っていなくても、過去の経験からそういった気配りをしてくださる先生もいらっしゃいます。

 だからこそ、私たちは、言葉を選んで、次につながる伝え方を工夫する必要があります。簡単なことではありませんが、挑み続ける必要があると考えています。先生と一緒に、「ああ、こんな聞き方ができるようになった」と子どもたちの成長を喜びあいたいと思うからです。