おはなしを戻す効用

 おはなしを戻すことを、言葉の確認だけにしてしまうことは、とてももったいないと感じています。

 大事なのは、自分のイメージと言葉のつながりを確認することで、何度もやっているうちに、自分のイメージを客観的に感じることができることなのだと思います。

 あまり意識してはいませんが、イメージを固めないと語れないので、最初に覚える時は、イメージを保持することが精一杯の状態なのだと思います。

 けれど、戻す時には、イメージは固まっているので、イメージを再現することに集中しなくても物語として形になっていく感じがします。

 そのため、語りながら、そのイメージを客観的に眺める余裕が出てくるのだと思います。

 すると、自分が好きな場面が、無意識に肥大化していたり、物語として重要な場面のイメージが薄かったりすることが、自分でも感じられるようになります。

 これは、イメージで物語を共有する感じがわかるということで、これが子どもたちがどう聞いているのかがわかることにつながります。

 そして子どもたちにおはなしがきちんと渡せたかは、子どもたちの聞き方のことばかりでなく、語り手がイメージで物語を渡す感覚を含めて考えないと、どこに問題があるのかを見極められないと感じています。

 そのため、おはなし を戻す時は、イメージで渡すことを磨くチャンスです。

 言葉の正確さばかりに気持ちが行ってしまって、戻すことが、言葉の正確さを極めることだと思ってしまい、せっかく固めたイメージを置き去りにして、言葉だけが上滑りして、暗唱になっていく人がいます。

 何度か語っても、イメージを保つことができるようになった先があることを感じて、おはなし を戻すと、語っている方も、聞いている方も楽しい時間が持てると思います。