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驚いたこと

 ストーリーテリングをしてきて、子どもたちに想定外の反応をされて、どうしようと頭を抱えたことは、過去に何度もあります。

 ストーリーテリングの勉強会に参加し始めた頃、幼稚園で定期的にストーリーテリングをしていました。その当時私は、自分で立ち上げた図書館でのおはなしの会でしか語ったことがなく、クラス単位で定期的に語るというのは、はじめての経験でした。

 幼稚園の要望で、おはなしのろうそくは使えなかったので、ろうそくに変わるものを考えました。合図となる音の出るものにしようと思いつき、探し回って、姿形も音も気に入った鈴を見つけました。

 そしてぴったりのものが見つかって嬉しかったこともあり、何の疑問も持たずに使ったのです。

 ところがその鈴を鳴らした途端、何人かの子どもたちが立ち上がり、両手を前にまっすぐ伸ばし、両足を揃えてぴょんぴょん跳ね始めたのです。それをみてみんなで真似し出して、ストーリーテリングどころではなくなりました。

 私は、何が起こったのかさっぱりわからず、呆然としました。今思い出しても、その状態からどう治めたのかはっきり思い出せない位、動揺したことの方が強く心に残っています。

 子どもたちはひとしきり飛び跳ねて満足したのか、すわってという私の言葉に従ってくれて、おはなしの会はなんとか予定通りすることができました。

 あとで幼稚園の先生から鈴の音に反応した理由は、キョンシー映画のまねだと教わりました。キョンシーは鈴の音で動くそうで、普段鈴なしでキョンシーごっこをしていた子どもたちにとって、鈴の魅力に抗い難かったらしいです。キョンシー映画はかなり流行っていたらしいのですが、流行に疎い私は、予備知識もなくただただ驚きました。

 けれどクラス単位の子どもたちのパワーを身をもって知ることになり、集団という視点を持つ基盤になりました。

 またこの幼稚園が集団で活動することを大事にされていたので、刺激を集団活動に変換していく力が子どもたちにあったので反応も大きなものだったのだと思います。

 そしてストーリーテリングの時は、担任の先生方は一緒に物語を楽しんで欲しい、子どもたちがどう聞くかは私に任せてほしいという私のお願いを受け入れてくださっていて、先生と子どもたちと私の間に信頼関係が成り立っていました。

 信用されて任された状況だったので、内心泣きたくなっても助けを求めるわけにはいかなかったことは、私にとって深い学びにつながったありがたい出来事だったと思います。