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今年度の驚き

 今年度、ストーリーテリングをしていて驚いたことがあります。

 小学校2年生のあるクラスで「アナンシと五」というおはなしを語りました。

 「アナンシと五」はジャマイカの昔話で、ストーリーテリングを聴き慣れない子どもたちでも物語の展開についていきやすく、子どもたちにとって予想外の結末で聴き終わった時の満足感が高く、ストーリーテリングの面白さを共有しやすい物語です。

 以前もお伝えしてきたように、ストーリーテリングは聞き慣れることで、より楽しめるので、おもしろかったという体験の積み重ねを大事にしたいと考えています。そのため「アナンシと五」のようなおはなしの出番は多いのです。 

 そして今年度も「アナンシと五」はいろいろなクラスで語ったのですが、いつもと同じように語った「アナンシと五」で初めてキョンシー事件に近いことが起こったのです。

 「アナンシと五」の中で、アナンシに五と言わされて魔女の呪いにかかってばったり倒れて死んでしまうという場面があります。それを聞いて実際に五と言って倒れる子どもが出たのです。本来なら物語の中に留まって、中で起こっていることを受け止めながら、物語について来るはずの聞き手が、物語から離脱して受け取ったイメージを身体で表現して、他の子どもと共有しようとしたというはじめての経験をしました。

 以前のキョンシー事件とは違い、既に語っている途中でしたので、聞いている子どもたちを優先するしかない状態で、驚きましたが物語に集中するしかありませんでした。

 なぜこんなことが起こったのかは、はっきりしていません。今のところ私が予想しているのは、実際自分でやってみて納得する時期の体験が不足しているのではないかという事と、友だちと共有する体験が薄いのではないかという事です。加えて、集団でのルールを身につけていないのかもしれないことも含まれるかもしれません。

 もっと幼い子どもならこれほど驚きませんでしたが、小学校2年生ということで、本当に驚きました。自分の関わり方だけでは解決しないような問題が起こっているようで、おとなが力を合わせて子どもに関わる必要が出てきている気がします。