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自分の本

 図書館でおはなしの会をしていると、子育て真っ最中の保護者の方たちとお会いする機会に恵まれます。そんな中で最近の子育て世代の方たちは、とても上手に図書館を使っていらっしゃると感じています。生活の中に図書館が組み込まれていて、館内用のカゴを持って慣れた感じでお子さんと話しながら、絵本を選んでいく様子から、何の気負いもなく絵本のある生活が確立していることが伝わってきます。カゴからあふれんばかりの絵本を借りていく姿を見るのは、子どもの本に関わっているものとして嬉しい限りです。

 ただ老婆心ながら、一つ気になっていることがあります。

 図書館で借りることが習慣になるのは、とてもいいことだと思うのですが、絵本は借りるものとして子どもたちに伝わっていないかという点です。

 最近、物を持たないことが機能的で豊かな生活を作るという考え方が浸透してきています。特に子どものものは、サイズが変わっていきますし、物の扱いもおとなと同じようにはいきませんから、消耗品という感覚になります。おとなに比べて変化が著しいので好みも変わっていきます。

 そんな中で子どもの本も消耗品という感覚になりがちです。おとなでも本は借りる派と買う派がいます。借りることが問題なのではなく、この消耗品という感覚と借りることが結びつくかもしれないことが気になるのです。

 買うという行為は、選ぶことです。それは自分だけのものになるということです。この特別な感じは、子どもにとってとても魅力的な体験で、本は自分にとって大事なものという感覚の根っこを作ると思うのです。

 なんでも買い与えればいいわけではありませんが、自分の本を持ったことがなく本を借りた経験しかないと、本は消耗品という感覚を作っていく土壌になるような気がしています。