見える感じ

 基本のイメージを固めることについて、おさらいしてみたいと思います。

 ストーリーテリングは、テキストがあるので覚えようとした時、暗唱になってしまうことがあります。自分で確かめる場合、語っていて次なんだっけと言葉を捕まえようとした時に活字が浮かぶかどうかが、見分け方のひとつです。

 言葉を探した時に活字ではなく、場面として見えていることがイメージを固めるということだと感じています。物語を覚えなくてはと暗記に囚われすぎると、まず言葉ありきになります。そこに後からイメージをつけようとすると物語が流れなくなります。ストーリーテリングでは物語は止まることなく、さらさらと流れていることが前提です。ストーリーテリングで語られる話は、結末に向かって太い一本の線のような道筋があります。それに沿うことが推進力となって聞き手を導くのだと思います。語り手は道筋を言葉でなくイメージとして再現できるようにし、そこに言葉がついていくというのが私の感覚です。

 私にとって道筋をイメージで再現できる感じは、その場面を見える感覚で思い浮かべることです。そのためイメージを固めるというのは再現可能な状態にすることで、それは活字ではなく場面が見えるようにする作業です。

 テキストを何度も読むというのは、活字から離れて場面を見るための工程です。言葉をつけるのは最後で、慌てて覚えない方がいいのもそのためです。

 イメージについての話は、勉強会でもいつもしている話ですが、言葉を覚えることから始めると、目的からずれてしまいます。どういう状態がいいのかは、感覚的なもので、同じ状態を同じ言葉で表現していないこともあるので、うまくお伝えできていなかった部分でもあります。

 そして聞くと分かりますが、これも同じ聞き方をしているかどうか確認が取れないので、共通認識になりにくいと気がついてきました。聞いたらわかるという言い方では不十分だったと思っています。

 もし、イメージを固めるという感じがうまく掴めないと感じている人は、言葉を覚える前に場面が見える感じを試してみてください。もしかしたら、これで感覚が掴める人がいるかもしれません。