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人との距離感

 私たちが図書館で定期的にやっているおはなしと本の会では、おはなしを聞いた子どもさんのカードを作り、自分でシールを貼ってもらい、カードがシールでいっぱいになったらプレゼントするということをしています。

 カードにはお子さんのお名前を書いてもらい、保護者の方の同意が得られたら、住所を書いてもらっています。そして書いてもらった住所は、子どもさん宛の年賀状作成のためにだけ使っています。

 おはなしと本の会をはじめた頃は、今ほど個人情報という考え方が浸透しておらず、住所を書いてもらうことに、保護者の方も私たちも違和感がなく、参加してもらった子供達全員に年賀状を差し上げていました。

 けれど最近は、個人情報の取り扱いに慎重になり、保護者の方によっては住所の記入は控えたいという方もいらっしゃいます。

 自己責任を問われ、危険から自分で身を守ることを意識させられる上、個人情報の悪用で特殊詐欺等の事件が多発している現在、時代の流れとして、仕方のない部分はあると思います。けれど安心と引き換えに、人との関係が希薄になっていく感じもしています。元々、人との距離感は、個々の感覚の違いと人間関係の深さによって変化するので、一概にはいえないものです。けれど距離感を取りすぎて、人と繋がることを避ける状態になるのは、望ましいことではないと感じています。距離感は信頼関係とも関係するからです。距離感が近ければ近いほどいいとは思いません。近すぎると相手を尊重した関係にならないと思うからです。けれど遠すぎる距離感は、人間関係を構築していく力を削ぐ気がしています。袖振りあうも他生の縁くらいの距離感が、おはなしと本の会で作れるといいなぁと思っています。