· 

絵から読みとる力

 おはなしざしきわらしの会の勉強会はグループごとにやり方が違っています。それぞれが自分たちに合わせて、学びたい形を作っています。

 その中に、時代が評価を通した絵本で、読み聞かせに使われてきた絵本を課題にして読み聞かせの勉強をしているグループがあります。無作為に3冊づつ決めて課題にしているのですが、昨日の勉強会の組み合わせがとてもおもしろく、あまり意識していなかったことが見えた気がしています。

 

『100まんびきのねこ』ワンダ・ガアグ/文・絵  福音館書店

『ペレのあたらしいふく』エルサ・ベスコフ/作・絵 福音館書店

『まりーちゃんとひつじ』フランソワーズ/文・絵  岩波書店

 

取り上げた絵本はこの3冊でした。

 勉強会では読み手や選んだ絵本によって、絵本の内容がうまく伝わったり伝わらなかったりする感じはいつもあるのですが、今回うまく伝わらない理由が読み手の絵本の絵の読み取り方によるのではないかと感じました。

 今回の3冊はそれぞれ個性的で絵が伝えているものがそれぞれ違うのですが、読み手は絵読みはどれも同じことだと捉えていたために、聞き手にうまく伝わらず、バランスが崩れてうまく伝わらなかったのではないかと思います。

 絵から読み取る事は無意識にやっていることなので、私もどこをどう捉えているのかをうまく伝えて来れなかったのだと感じました。

 『100まんびきのねこ』は、昔話的な文章を助け、登場人物は血肉を感じさせず具体性に重きを置かない絵が描かれています。そして、物語の進行を助ける絵が描かれています。例えばおじいさんの絵に合わせたつもりで歳を実感させる喋り方で読むと、実際は昔話的に肉感を感じさせない年取ったおじいさんが描かれているので絵と合わない読み方になります。

 『ペレのあたらしいふく』は、日常を切り取った内容に合わせて、写実的で生活感がわかる絵でペレの日常を表現しています。登場人物の表情や服装、調度品などからペレが住む世界の価値観が全て絵から読み取れるようになっているので、現代の価値観が混じり込む余地がなく、物語としての完成度を高くしていると思います。絵からペレの日常の当たり前を受け取り損なうと、物語として不安定になる感じがします。

 『まりーちゃんとひつじ』は、岩波子どもの本シリーズの一冊ということもあり、3冊の中で一番挿絵的な絵がつけられています。絵だけ見て物語の展開が分かるかわからないかのギリギリのところだと思います。絵もデザイン的で象徴的な絵が使われ、絵の雰囲気が登場人物を引き立てています。絵を動かすというより、この雰囲気を受け取って文章にあるのに絵に書かれていない部分を補う読み方が求められます。そして微妙に絵が足りなくても読み聞かせに使われてきたのは、声に出して読んだほうが映える文章のためだと思います。

 そして、やはり3冊とも読んでもらって楽しい絵本だなぁと読み継がれてきた絵本の力を改めて感じました。