書き言葉と話し言葉

 こうやって定期的に書くようになって、書き言葉と話し言葉の違いを実感するようになりました。話すことで伝えてきた経験が長いので、基本私は話し言葉によって文章を考えています。これは校正をやっている友人とのやりとりで気がついたことで、正直な所、私自身が明確に違いをわかって使い分けている訳ではありません。

 この書き言葉と話し言葉という分け方は、昔話のテキストに触れる時に感じていたことにつながると思うので整理してみたいと思います。

 昔話は元々、語られることで伝承してきたものです。それをある段階で文字におこして、活字で読むことができるようになったものです。私見ですが、再話の際、聞いた印象と読んだ印象の違いに再話者が戸惑い工夫を凝らし今読んでいる昔話になったのではないかと想像しています。

 例えば、グリム童話ですが、第七版と改定を重ねているのは、話し言葉から書き言葉への変換のさじ加減に悩んだという部分もあったと思います。聞いた時には違和感のない生き生きとした語りを文字にすると意味が通らなくなったり、聞いた時以上に物騒な印象の話になる戸惑いは想像に難くありません。

 日本の昔話も、方言の処理の問題と捉えられることが多いですが、やはり話し言葉と書き言葉の問題があると思います。方言は話し言葉です。意味がわからないという言葉の伝達能力の問題ではなく、話した時の感じと読んだ時の感じの違いの方が実は大きい問題なのだと思います。日本の昔話に関しては、書き言葉と話し言葉の違い以外に、語り手と聞き手の関係に特徴があると思いますのでその辺を次で整理してみたいと思います。