語り手の集中

 語り手の「集中の度合い」を考えたときに、何に集中するかとといえば物語にということになると思います。ストーリーテリングをする際イメージを大切にしていますが、イメージを思い浮かべること自体は集中力を必要としません。けれどイメージを固めて物語を支え続けるには集中力が必要だと感じています。そしてイメージに集中するのではなく、物語に集中すると考えている理由はストーリーテリングが物語を進行させることで成り立っていると思うからです。ストーリーテリングは活字で著されている物語を一旦語り手の中に取り込んで改めて物語として語るため、語り手によって変化する余地があるものです。均一化しないことがストーリーテリングのおもしろさではありますが、語り手の解釈や感想が入り込みすぎると聞き手は物語自体を受け取ることができません。ストーリーテリングは活字を追わずに読書する体験だと言われるのは物語自体を渡すことができるからです。語り手の解釈が入り込みすぎると原作のある語り手の創作になってしまいかねません。私たちは物語を渡すためにストーリーテリングをしているのです。そのためには物語自体に集中することが大事だと考えています。物語に集中すると展開に疑問を持たないと思います。自分が変だと思っても物語の中では実際起こったことだからです。この自分の感想が混じらない感じが集中していることだと思います。ただこれは、ストーリーテリングに向く話をきちんと選べていないと成り立ちません。きちんと選んだ上で集中を感じるようにしてください。