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選んでいる自覚

 昔話絵本は、同じタイトルの絵本がたくさんあります。物語自体は伝承のものなので、同じ物語に様々な画家が絵を描くことが可能なためです。昨日たまたま昔話絵本の本物はどれかという話になりました。話題になった本物という言葉が新鮮でした。本物という言葉を使っていましたが、大元の絵本というか原作を知りたいという感じの話でした。興味深かったので改めて整理してみます。 

 ます昔話は伝承のもので再話者が活字化するまで確定版がありません。物語自体に本物という言い方がそぐわない感じがします。

 そして絵ですが、昔話が伝承されてきた国出身の画家が描いた方が本物なのではという意見が出ていましたがそれも違う気がしました。確かに日本の昔話を絵にするなら物語の舞台となる風景や登場人物を再現することに関して日本の画家にアドバンテージがあるとは思います。けれど昔話にはドラマの時代考証のような細かい設定は必要ないと思います。昔話は「むかしむかしあるところ」で展開する物語です。国や地域を変えて成り立つとは思いませんが、もっとざっくりした印象です。画家の手によって昔話の出身地が表現されていることが大事なのだと思います。ただ「あるところ」なのですが、風土からは切り離せないのも昔話の特徴だと思います。そのため画家の出身地より、この昔話の特徴を理解して絵にしているかが昔話絵本を見る時のポイントだと思います。例えばマーシャ・ブラウンなどは、画法を変えることでいろいろな国の昔話を鮮やかに表現し絵本にしています。

 普段あまり意識しない言葉で整理すると、時代が評価を通した絵本とか絵読みができる絵本とか、使い慣れた言葉では説明しきれないものが見えてきて驚きました。こうやって何度も整理することで私たちはたくさんある絵本から、これだというものを選んでいるという自覚を持つことが大事なのだと思います。なぜこの絵本なのかということを説明できることが、絵本を選ぶ力となっていくのだと思います。