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くぐもる声

 日常的にマスクをする生活になり、マスクを使うことを前提とした対応を考える時期がきています。声を使って伝えている私たちですが、大事なのは物語でそれを支えているイメージだと考えてきました。そのため声の大きさ、スピード、話し方は、語り手の自然体を心がけてきました。 物語主体なのは変わりませんが、いよいよ声のことも考えなければならないと感じています。

 マスク生活をしていると、会話するのが不自由な感じがします。声がくぐもって聞こえにくいのです。何度も聞き返すのも憚られ、恐ろしいことになんとなく話半分に流す癖がついてきている気がします。おとな同士の普段の会話ですらこの状態ですから、子どもに物語を伝える時の聞きにくい状態は致命的なことだと思います。

 マスク生活が始まったばかりの頃は、マスクをしているために呼吸がしにくく、ぼうっとしがちで子どもたちの集中が続かないと考えていました。けれど聞こえにくさも集中が続かない理由のひとつだったのだと思います。

 私たちは一番後ろの聞き手に聞こえているかどうかで声の大きさをコントロールしてきたので、以前と比べると自然に声は大きくなっていると思います。けれど声の大きさだけでは、マスクごしの聞きにくさは解消しきれないと思います。これからは発声の練習なども取り入れる必要が出てきているかもしれません。滑舌を良くしようとすると日本語の音として1拍1拍を明瞭にしようとする意識が働くので、自分としては大袈裟な言い方をする感じになります。けれどマスクのために自分の意識と聞こえ方にズレが出るので勉強会などで試す必要が出てきているのだと思います。