聞きどころ

 昔話の骨組みとなっているところは、聞き手にとっては昔話の聞きどころだといえます。聞きどころは一箇所ではなく聞きどころが連なって物語になっています。そしてあらすじと聞きどころは別物です。語り手が聞き手のから受ける印象としては聞きどころになると聞き手の集中がきゅっと高まり物語に入り込んでくる感じです。自分の持ち話は同じ話を5回子どもに語って完成させると言われるのは、この聞きどころを聞き手に教えてもらうことが大事だからです。聞きどころがわからずに語ると物語が散漫になり記憶に残りにくくなると思います。

 自分の経験を振り返ると経験を積むにつれ徐々にイメージを固める段階で聞きどころが掴めるようになる感じでした。これがわかってくると語りに向く話なのか向かない話なのか覚える前になんとなくわかってきます。あえて言葉にするなら、苦もなくイメージが浮かぶとか、ぱっと絵になる場面です。例えば「金の毛が三本ある悪魔」で沈まない箱が主人公を象徴していると書きましたが、語り手はあくまで川を流れる箱を丁寧にイメージしているだけで、主人公だぞと意識する訳ではありません。聞きどころとなる場面ほど細部までくっきりとイメージが作れるのです。

 ただ聞きどころはイメージを固めることに慣れていなかったり、イメージで物語を捉えることができないまま探しても見つからないものです。下手に聞きどころを探すとかえってバランスが崩れることもあるので、暗誦ではなくイメージで物語を捉えることを繰り返すことが、結局はストーリーテリングを完成させる近道なのだ感じています。