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顔を見ない

 私たちが集団で読み聞かせをする場合、絵本の画面だけ見て聞き手の顔を見ないで読んでいます。これは集団での読み聞かせで私たちが子どもたちに渡すべきは絵本の内容であり物語だと考えていることに繋がっています。

 物語を伝えるには子どもたちが耳目をひく場面だけでなく丸ごと物語を受け取ることが大事だと考えています。私たちは子どもたちが絵本の世界に入って出てきたという現実との区切りを感じることで物語を丸ごと受け取っていると感じています。現実と物語との区切りは読み手の物語への集中力で伝えることができます。読み手が物語に集中することは、子どもたちが物語の始まりからおしまいまで物語の中に留まることの手助けになります。読み始める前の子どもたちの顔を見ながら言葉をかけている時と、読み始めて絵本しか見ていない時の違いを感じてもらうのです。

 ただ顔を見ないで読むのは絵本の中と外の違いを感じさせますが、そこに物語への集中力がなければただの作法になってしまいます。絵本の中だということを読み手が強く意識し集中することが大事です。題名を読んでからおしまいというまで読み手が絵本の外に出ないことが子どもたちを絵本の中に留まらせるための要素になります。

 そして親子で楽しむ時のように子どもの反応を拾って読み方を微調整することは、読み手の物語に対する集中をそぎます。また読み間違えたりすることで自分の読み方を客観視すれば読み手の物語に対する集中が落ちます。ましてや途中で聞き手に読み間違えを謝ったりすれば物語の途中で絵本の世界から聞き手も現実に引き戻されてしまいます。何度も言いますが集団への読み聞かせで大事なのは語り手の集中力であり語り手が物語に留まり続けることです。

 顔を見ないで読むといった既に習慣となっていることには理由があります。子どもたちが思ったように聞いてくれないと感じるときは基本に立ち返って自分たちのやっていることを見直すと答えが見えてくると思います。