あらすじじゃない

 私は、おはなしざしきわらしの会の活動以外に「本は友だち」という上田市教育委員会の事業を引き受けています。これは子どもたちが自分で読むことに重点をおいたプログラムです。実際に本を持ち込んで、その持ち込んだ本について子どもたちが読みたくなるよう話をし、担任の先生、学校司書と力を合わせて読書環境を整えるのが私の役割です。

 そして私の活動に近いものとしてブックトークがあります。最近はブックトークという言葉が周知され本の紹介をする人も増えてきました。そんな中で本の紹介をする際、あらすじが取り上げられる場合がありますが、あらすじは読みたい気持ちと直接繋がっていないと感じています。あらすじを知ってその本を読みたくなるのは読書の楽しみを知っているおとなの感覚なのかもしれないと思うのです。

 あらすじはある意味ネタバレに近いものがあります。そのため子どもにとってあらすじは物語を受け取った感覚なのだと思います。おとなはあらすじから物語の豊かな広がりを想像できますが、子どもはその過程を想像できないからではないかと予測しています。

 これを踏まえてストーリーテリングをする者として気になるのは、語り手が昔話をあらすじ的に捉えている事があるのではないかという点です。シンプルな作りですが、昔話は物語として完成しています。あらすじのように枝葉を落とした感じがするとすれば、昔話の魅力を捉えきれていないのだと思います。昔話の豊かさは聞き手との共感性の高さにあると思います。口承されてきたことで人間としての根源的な感覚が反映されていることと、聞いてすぐ迷いなく理解できるように作られていることが理由だと思います。どんなに単純で短い昔話でもきちんと物語になっていることを感じて欲しいと思います。