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根っこのところ

 ストーリーテリングや読み聞かせについて書いていると、無意識にやっていることを言葉で表現しようとすることになり、同じところをぐるぐる回っているような気がします。別段特別なことをやっているわけではないというか、誰でもできることの中に答えがある感じなのです。

 言葉にしてみたら、当たり前すぎて言葉にするまでもないことが物語を伝えることなのかもしれないと書いてみて思います。ですから松岡享子さんがおっしゃるようにストーリーテリングは誰でもできるというのはある意味本当のことだと思います。私も松岡さんの言葉を信じてストーリーテリングをはじめた1人ですが、うまくいかなかった ことは数え切れないほどあっても無理だとかできないと思ったことは一度もありませんでした。そして息長く続けてきた理由を言葉にすると、物語の中に浸ることが好きだからという平凡でなんの捻りもない表現にしかなりません。でもこの気持ちに支えられた部分は大きいと思います。好きな気持ちが育ててくれた物語に対する絶対的な信頼感は、聞き手に物語を伝える時の自信になった気がします。語っている自分ではなく、物語が主役だからこそ気負いや押し付けがましさから自由になれる気がします。伝えている自分に不足はあっても物語に不足はないと感じるようになってから、語ることが負担でなくなってきました。やっぱり物語っていいよねの気持ちがストーリーテリングや読み聞かせの根っこなのではないかと思います。