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ストーリーテリングと読み聞かせ

 ストーリーテリングは覚えて語るのでハードルが高いと言われます。けれど読み聞かせもストーリーテリングも難易度は変わらないのではないかと思っています。私たちは、読み聞かせもストーリーテリングも物語を物語として丸ごと子どもたちに渡す手段として使っています。どちらも物語を渡すことに関しては違いはないのです。私たちが考える読み聞かせとストーリーテリングの違いは画家が描いたイメージに物語を載せるか自分が固めたイメージに物語を載せるかだけです。そしてイメージを固める手間がある分、ストーリーテリングの方が物語を丸ごと捉えることが容易です。物語の流れを感じないとイメージの連なりが生まれず物語にならないからです。そして準備をしっかりしないと語れないので物語に向き合う時間が自然と生まれます。

 一方読み聞かせは、準備のしどころがわかりにくいのです。絵本を見せている分、読み手が支えている部分がストーリーテリング程実感しにくいことと読むだけなら誰でもできるためだと思います。必要なものは絵にすべて描かれているため、読み手は物語として捉えるより、間違えないことや鉤括弧の中の表現の仕方といった読み方に特化した練習をしてしまいがちです。けれど画家が物語をどう捉えて、どういう絵が使われていてどう連なっていくのかを置き去りにすると物語として破綻します。イメージを固めていないだけで、画家の作ったイメージに物語を載せる必要があります。物語として伝えるにはイメージと文章は切り離せないのです。

 ストーリーテリングや読み聞かせをする側は物語を伝えているという意識が必要不可欠です。物語は部分的に楽しいものではなく丸ごと渡すから楽しいということを常に意識して準備したいものです。