積み重ねる

 私たちのやっているストーリーテリングは聞く集団を育てる部分があります。同じメンバーで継続的に聞くことの効果は、家庭文庫でのストーリーテリングの実践を見るとよくわかります。

 家庭文庫は子どもが自分で読むための本を貸し出すところで小学校へ入学する頃から通いだす子が多いです。そして通う子どもたちは1年間で30回程はストーリーテリングを聞き、単年ではなく複数年通うことが多いのです。そのため文庫の子どもたちにとって物語を聞くことは特別なことではなく、まるで読書をするように自然に物語に集中し、かといって一緒に聞いている仲間をシャットアウトするのではなく時に反響しあいながら物語を楽しみます。物語を聞く力があるので、物語を差し出すだけで砂に染み込むように物語が伝わっていきます。

 ただ家庭文庫の場合、ストーリーテリングを聞くだけでなく文庫で本を借りていくことがセットになっているので、聞くことと読むことの両面から物語に誘うという、子どもの読書にとって最適な環境で行われている実践です。そのため私たちのやり方とは一概に比較できないとは思います。けれど同じメンバーで回数を重ねることで家庭文庫ほどではないにしろ聞く力は育ちます。

 私たちは保育園が私たちを必要としてくれたこともあり、子どもたちが物語を受け取ってくれるのが嬉しくてストーリーテリングを保育園で語ってきました。けれどストーリーテリングに限れば、小学校に入学してから聞く回数を重ねることが重要なのではないかと思うようになりました。そして小学校には図書館の時間があります。家庭文庫のように本を借りる事とセットにすることも可能です。プログラムを組むようなおはなしの会ではなく図書館でストーリーテリングをひとつ聞いてから本を借りる形はどうでしょうか。調整は必要ですが学校図書館との連携でストーリーテリングができないかと考えています。