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一期一会

 おはなし ざしきわらしの会のメンバーは、毎月勉強会をしています。なんとなく勉強会という名前が定着して使っていますが、お互いのストーリーテリングや読み聞かせを聞き合う場です。改善点などのアドバイスはしますが、大事なのは聞くことです。私たちの活動は聞いてくれる人がいて完成するものなので、どう伝わっているのかは聞いて確かめるしかないのです。

 そしてこれも何度か取り上げていますが、何を聞いているのかといえば、語り方ではなく物語を聞いているのです。注目すべきは物語がすとんと滞りなく伝わるかです。これは絵本でもストーリーテリングでも同じです。

 今まで勉強会でうまく物語を受け取れないのは、物語を受け取るという点に集中できずに語り方や語っている人に注目してしまうためだと考えてきました。けれど思いがけないところに落とし穴があることに気がつきました。私たちは長く活動しているので、メンバー同士のお付き合いも長いのです。特に勉強会はグループ分けしてありメンバーが固定しています。場合によっては私的なことも共有したりしながら信頼関係を築いてきました。そのため物語と語り手を切り離さずに一体化して受け取る癖がついているのではないかと思います。この話はこの人に語ってもらいたいというのも、今日語られた物語ではなく、その人が語った過去の物語の記憶が今日の物語に影響してバイアスがかかる部分があると感じています。これは同じメンバーで聞き合っている良さではありますが、一つ間違うと成長を阻むものでもあると思うのです。

 ストーリーテリングや読み聞かせは、寸分違わずに再現できないところも魅力だと思います。同じようにやっているつもりでも、聞き手の状況、語り手の状況、そして聞き手と語り手の組み合わせ全てが伝わり方の違いを生みます。ですから勉強会では毎回初めて聞くつもりで聞かないと聞くことの醍醐味が味わえないと思います。ストーリーテリングや読み聞かせは大袈裟かもしれませんが一期一会の楽しみだと思います。