物語の捉え方

 ストーリーテリングは物話ととことん付き合わなければ、語れるようになりません。時間をかけて同じ話と向き合うことでイメージを固めることができ物語の展開が際立つことにつながると考えています。けれど時間をかけて向き合う過程で物語が自分のものになってくると語ることに余力出てきます。その余力の使い方を間違えると物語の展開が見えにくい語りになる場合があります。昔話は基本とてもシンプルな作りです。物語の展開に必要ないものは登場しませんし物語の要になるものは印象に残るような使われ方をします。しかし時間をかけて向き合っているうちにこのシンプルでくっきりした物語の道筋に余計なものがついていってしまうことがあり、これが物語の展開が見えにくい語りにつながるのです。そして余計なものが付きがちな語り手は二つのタイプに分かれる気がしています。

 一つは読書好きで普段の自分の読書の延長でテキストを読み込むタイプです。読書する時のようにテキストと向き合うと無意識に行間を読み取り内容を深めていってしまいます。そうやって覚えたストーリーテリングは物語が気持ちよく進まなくなり聞き手が物語を受け取りにくくなります。

 もう一つは子どもが好きで子どもの反応や成長に心を寄せることが身についているタイプです。物語と向き合っているうちに子どもが知らないものが出てくるのが気になったり、物語の中の出来事が子どもに悪影響を与えるのではないかと心配になったりと子どものために細やかに気を回します。すると物語を丸ごと受け取ることから離れていってしまい、聞いて受け取りやすいストーリーテリングではなくなっていきます。

 こういった傾向があると感じている語り手は昔話の音読をお勧めします。音読は同じ話を読むのではなく、どの話も一回しか読まないことがコツです。そして数をこなしてみてください。すると聞くことと同じような感覚が掴めます。一回しか読まなくても物語の展開が記憶に残るのがストーリーテリングの特徴のひとつです。そして一回しか読まなければ、一つ一つの出来事や登場人物の心のひだなどではなく、物語を丸ごと受け取る感じが掴めてくるのではないかと思います。