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読書の楽しみ

 ストーリーテリングのことを聞く読書と言っていますが、ストーリーテリングで物語を楽しむことと、読書で物語を楽しむことは完全に一致しているわけではありません。どこが違うのかと言えば、行間を読むか読まないか、もしくは引っかかりを深めるか拘らないかという感じでしょうか。

 読書は物語の展開だけでなく読んでいてどうしてだろうと考えることも楽しみにつながります。登場人物のやりとりや行動の意味を考えること、主人公以外の視点から起こったことを見直すこと、風景や建物の描写から物語の世界を特定したりすることなど、気になったことをとことん突き詰めることも読書に含まれます。

 一方ストーリーテリングは、あくまで物語の展開が主役です。誰が出てきて何が起こってどうなったかを楽しみます。どんなに長い話でも、ストーリーテリングで語られる話は相対する視点から語られることはなく、立場を変えて考えることを必要としません。だからと言って単純で先が見えるとは限らないのがストーリーテリングのおもしろさでもあると思います。

 この違いを意識すると、語りやすいと思います。たくさん読んでたくさん聞くという効用は、この違いに気がつくためなのではないかと思います。違いを知った上で読書を楽しんでいけたらと思います。