書いてある通りに

 自分の持ち話になっている物語のテキストを書き写していて、おもしろいことに気がつきました。イメージが固まった状態でテキストを見ると、点の位置がイメージの塊を表していると感じたのです。特に『子どもに聞かせる世界の民話』がその傾向が強いと感じました。やたらと点が多い印象なのですが語りのリズムに合うのです。読むときに欲しい点の位置と語る時に欲しい点の位置が違うのではないかと推測しています。

 この実業之日本社から出版されている『子どもに聞かせる世界の民話』は読んで聞かせることを視野に入れて作られた本です。ストーリーテリングのテキストとしても愛用されているものですがこの本の使い方というページには、読んであげる対象は、3、4歳から10歳くらいまでの広い範囲を考えてあると書いてあります。そしておかあさんと一緒に楽しい時を過ごしてほしいと明記してあります。またお母さんが忙しい時は8、9歳の子どもならひとりで読めるように漢字はなるべく少なくしてあるとも書かれています。初版が1964年という本ですから、今の時代とは少し異なる表現ですが、物語を聞くことの意義を十分意識した内容です。ですからタイトル通り聞かせることに特化した書き表し方なのではないかと思います。

 そして1995年に『子どもに聞かせる世界の民話』をベースに子どもが自分で読むことに特化したバージョンが『こども世界の民話』として出版されています。今まで書き表し方に注目したことがなかったので、比べたことがないのですが、書き表し方に注目してみるとテキストにヒントが詰まっているのかもしれないと思いました。