細く長く

 活動が長くなってくると、メンバー同士お互いの人生の節目に間接的に立ち会うことがあります。活動当初はメンバー自身の結婚や出産、そして子どもの成長に伴って進学、就職、結婚などの周りも幸せな気分になるものでしたが、会の発足から35年も経つ最近では本人や家族の働き方が変わることや看病や介護そしてお別れなど厳しいことも起こってきました。そしてそれらは本人に悲喜交々の思いをもたらし、それぞれがいろいろな思いを抱えて生活してきました。状況によっては活動をお休みする人もありましたし戻ってくる人、厳しい状況の中続けてくれる人もいました。私自身、おはなしのお姉さんからスタートして今や立派なおはなし のおばさんです。私には孫はいませんが、同世代の人はお孫さんがいる方が増えてきているので、もはやおはなしのおばあさんと呼ばれてもいいのかもしれません。

 ストーリーテリングの語り手としての準備は、道具を必要とせず自分の隙間時間に取り組め場所も必要ないので、どんな状況でも続けることができます。そして中断していてもいつでも戻ることができるものです。ありがたいことにバレエのように一日休むと自分に分かり二日休むと仲間に分かり三日休むとみんなにわかるというものではないのです。それが生活している中で起きる様々なことを受け止めながら私たちが語り手として続けられてきた理由のひとつだと思います。

 そして細く長く続けることは、語り手としての充実につながると感じています。憧れた語り手は歳を重ねた人たちでした。今思うとあの泰然とした感じや揺るぎない物語の世界観は語り手の人生経験に裏打ちされたものだったのだと思います。憧れた語り手に遠く及ばないまでも、人生経験が語りの補強してくれる世代になってきました。私たちも置かれた状況を生かしたストーリーテリングを目指していけたらと思います。