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両方大事

 今まで読み聞かせをしてきて、乳幼児で絵本が嫌いな子に会ったことがありません。子どもたちはある一定期間は無条件に絵本が好きです。理由はいくつかあると思いますが、乳幼児にとって絵本は読んでもらうもので、絵本を読んでもらう時は読んでくれる人を独占できるからというのが大きいと思います。ですから親などのお家の人に読んでもらうことは欠かせないと感じています。一番安心できるお家の人のお膝で読んでもらえば、どんな出来事が絵本の中で起こっても安心です。信頼関係が固く結ばれるのはそんな些細な積み重ねからだと感じています。

 そしてそれと並行して集団で楽しむことも大事だと考えています。集団で楽しむ時はお家の人と楽しむ時のように個々に寄り添った形で物語が渡されるわけではありません。そのため集団で聞く時は物語自体は個々ひとりひとりで受け取る形になります。ひとりで物語を受け取っていくことは子どもの集中を高めます。ひとりで物語に入っていくことは読書することにつながります。ひとりで物語の中に入り戻ってくる体験を集団の読み聞かせで体験することができるのです。そして一緒に聞いている子の反応が様々なことを感じる機会でもあり子どもの世界が広がると感じています。また違いを知るだけでなく同じものを同じように楽しいと感じる体験は子どもの成長にとって必要なことだと考えています。多様性が重視され同じということを同調圧力と捉え避ける傾向がありますが、同じという体験が子どもにとって社会を感じる第一歩だと思います。そして他者を知り社会という視点が育ってこないと読書を楽しめないと感じています。

 このように読み聞かせを楽しむことは、お家の人と楽しむものと集団で楽しむものが両輪になっていると思います。どちらが欠けても物語を楽しむことの基盤が充実しないと感じています。