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比較じゃない

 読み聞かせの効能を伝えにくいのは、効果が出るときの条件付けが複雑だからだと考えています。よく読み聞かせで推奨されていることが効果を実感することに結びつくとは限らないことが伝えにくさを生んでいると感じています。それは推奨されていることを同じように実践していると思っていても、実は同じにやっていないかもしれないことが理由だと考えています。多くのおとなにとって読み聞かせはするものであって、してもらうものではありません。そのため読み手としての比較対象をほとんど持っていません。おとなになってからは読み聞かせを目にするのは保育園や幼稚園での実践などを参観するくらいです。おまけに読み聞かせは目的によって読み方も絵本の選び方も変わるものです。保育園等の実践は保育園での読み聞かせ方であって、他の場所で他の目的に応用できるものではありません。そしてさらに問題を複雑にしているのは絵本も本ですから読むことが非常に個人的な営みの範疇に入ることです。個人の感じ方が優先され、本人の感性が基準になる部分があります。そもそも声自体でも好き嫌いが分かれたりしますので簡単に比較できるものでもありません。

 そこで比較するのではなく読み聞かせで何が伝わってくるのかを知ることが大事だと思います。そのためにはやはり聞くことなのだと思います。読み聞かせをしてもらい聞く側を経験することは個人的な感性を超えた読み聞かせの特性を知るために有効な手段です。そして注目すべきは読み方ではなく伝わり方です。絵から目が離せない感じで物語が終わるまで気が散ることなく絵本の中に浸っていることができたかが聞く時のポイントです。そしてこの点に問題を感じなければ、あとは好みの問題だと考えていいと思います。良しとする読み方に幅があるのはそのためです。そう考えると聞き合うことが楽しみになるのではないかと思います。