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言葉の習得

 私たちの活動はスタート時点では、幼児から小学生を対象と考えていました。けれど時代の変化と共に公共図書館でのおはなし の会に来てくれる子どもたちの低年齢化が進み、現在は赤ちゃんのクラスと幼児小学生のクラスに分けておはなし の会をしています。赤ちゃんのクラスを始めた頃は、出版界でも赤ちゃん絵本というジャンルが生まれ始めていて、それに助けられながらの活動でした。私たちのスタンスとすれば、ストーリーテリングや物語絵本を聞く場を守るために年齢的にストーリーテリングを聞くのが難しい子どもたちとクラス分けをしたという形です。こんないささか不純な動機で始めているので、赤ちゃん絵本に関しては「耳を育てる」とか「言葉でのやりとりを促進する」という程度の感覚で物語絵本を聞けるようになる土台作りだと考えていました。そして赤ちゃん世代は聞いた言葉を声に出して復唱することを楽しむ特徴があると活動する中で感じていました。そして出版されている赤ちゃん絵本は復唱しやすかったり、名前を当てたりすることが自然にできるような作りで言葉のやりとりを意識した作りのため使いやすいと感じていました。

 ところが昨日物語絵本を未満児さんのクラスで読んだ時に自分の考えの浅さに気がつきました。そのクラスの集中力が高かったので、試しに物語絵本を一冊入れたのです。読んだ絵本は『ぞうくんのさんぽ』でした。物語絵本の入り口としてよく読んでいる絵本ですが未満児さんには使ったことのない絵本でした。読んでみると未満児さんらしく繰り返される言葉に反応して一緒に声に出して復唱していきます。以前なら声を出したがっている時点で物語絵本を楽しむにはちょっと早かったかもしれないと思ってきました。けれどこの絵本で子どもたちが好んで復唱したのは乗るとか重いといった動詞や形容詞でした。同じ声を上げるのでも赤ちゃん絵本だと次々と動物が出てくる絵本の場合動物の名前だったりします。固有名詞でなかったことに驚きました。そして復唱しながら言葉を噛み締めているような印象を受けました。また物語の進行に合わせて復唱しているのでちっとも邪魔にはなりませんでした。絵本をたっぷり楽しんできた子の方が語彙が豊かだという本当の意味がようやく分かった気がしました。言葉の習得という長い道のりの中で絵本は意図しなくても読むだけで子どもたちの言葉の習得を助ける部分があるのだと実感しました。赤ちゃん絵本と物語絵本は地続きで赤ちゃん絵本というカテゴリーに囚われすぎるとせっかくの機会が狭まってしまうことを子どもたちが教えてくれました。