· 

ことばと戯れる

 『ことばあそびうた』の「ののはな」の1行目「はなののののはな」を「花の野、野の花」と漢字に直してみましたが、「花野の野の花」でも成り立つのではという指摘をもらいました。「花野」は思いついていなかったので、せっかくなので調べてみました。辞書を引くと「花野」は「花の咲いている秋の野原」となっています。そのため秋の季語でもあるようです。全文を書き写してみます。

 

ののはな

はなののののはな

はなのななあに

なずななのはな

なもないのばな

       『ことばあそびうた』谷川俊太郎/詩 福音館書店 より

 

こうやってみると後半になずなと菜の花が歌い込まれています。

なすなや菜の花は春の花です。冒頭が花野だとすると咲いている様子が感覚的にイメージしにくいなあと思いました。もちろん空想上の野原で季節関係なく様々な野の花が咲き乱れている様子を詩にしたという可能性もあります。けれどひらがな表記なのでどちらとも判別がつきませんし、多分どちらもありなのかもしれません。あえてひらがなにするおもしろさはこんなところにもあるのだと思います。漢字に当てはめるのは無粋なことと反省しました。

 作者の意図を考えるというのは国語の授業で取り上げられる手法ですが、例え作者に確認ができたとしても、作者の意図以外の受け取り方をすることも文学を楽しむことだと思います。そして俳句の季語や短歌で行われる本歌取りのような一つの単語に他の情報を取り込むというような作りになっていない限り、言葉から感じたまま受け取っていいのだと思います。そして『ことばあそびうた』は音で楽しむことに特化した詩だと思います。頭でっかちにならずにことばと戯れることが大事だと思いました。