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絵本の寿命

 時代を越えてきた絵本の良さを知っていると、最近は絵本の寿命が短くなってきていると感じています。単に残れないような作品だったと切り捨てていいのか迷うような本が混じっていると思うからです。そして私たちが好んで取り上げている時代を超えてきた絵本も品切れ絶版に追い込まれるものがあります。どんなに良い絵本でも手に入らなければ出会うことができないため絶版は絵本の寿命を縮めます。絵本が出版流通の中で生き残ってきている以上、出版のシステムもまた絵本の寿命と無縁ではないと思います。日本の出版のシステムは雑誌の出版がベースになって形成されたと言われているため基本読み捨てていくものの流通に適したものです。元々読み継がれていくことを想定していないところがあるのです。そのため絵本の場合、出版社と読者が協力して買い支える形でつないできた部分があります。そのひとつとして月刊誌として絵本を出版し低価格で多くの子どもたちに手に取れるようにした福音館の子どものともの手法があると考えています。その成功例として『ぐりとぐら』があります。月刊誌で出版されたのちハードカバーの絵本となり再刷は200を超え発行部数は500万部に届くのも時間の問題です。出版年は1967年なので時間はかかっていますがりっぱなミリオンセラーです。本来絵本はこういったロングセラーと呼ばれることを目指し寿命の長いものとして作られているはずです。ロングセラーとして時代を超えてきた『ぐりとぐら』は今親子3代で楽しまれるものになっています。日本の絵本もようやくここまできたのだと感慨深いものがあります。けれど次に続くものが生まれないのはとても残念です。働き方が変わり家庭生活や子どもの育つ環境が変わり、今までと同じように同じことを求められない時代になっています。けれど絵本が世代を越えて読み継がれていくことに心を向ける人が増えるとロングセラーが増えるのではないかと思っています。ロングセラーが増えることが子どもの豊かな絵本体験につながると考えています。