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聞く楽しみ

 読み聞かせを考える時は、読み方ではなくどう聞こえるのかに注目することが大事だと考えています。私自身読み聞かせについて質問をもらうことも多いのですが「どの絵本を読んだらいいのか」「どんなふうに読んだらいいのか」といった聞かれ方が多いと感じています。質問に答えるにあたって誰にどこでいつ読むのかを伺うと、学校での読み聞かせのボランティアや保育園での読み聞かせのボランティアでという答えが多いです。そのため聞き手の年齢とボランティアに入るにあたっての持ち時間ぐらいの情報しかもらえません。これはボランティアに入ることが目的でその任務を遂行するにあたっての質問なのだなと感じることが多いです。

 この状況はボランティアを取り巻く環境の変化も影響していると思います。昨年度はコロナ禍でボランティアが学校などに入る機会が制限されましたが、基本学校などはボランティアが関わることを歓迎しています。特に読み聞かせのボランティアは手軽に取り組め、ボランティアの負担が少ないとの判断からかどこの学校でも読み聞かせのボランティアグループが立ち上げられています。それもあって新しく読み聞かせに取り組む人が増えつつあるのだと思います。私たちが活動を始めた頃は、ボランティアを学校に入れるという考え方が一切ありませんでした。私たちの活動を評価してくださった担任の先生に個人的に呼ばれることで学校に入っていた私たちにとって現状は隔世の感があります。そして私たちはボランティアをすることが目的ではありませんでした。子どもたちにストーリーテリングや絵本に出会って欲しかったのです。

 もちろん現在活動している読み聞かせのボランティアグループでも絵本と向き合って勉強している人は数多くいらっしゃいますし、子どもと絵本を出会わせたいという熱意を持って活動している人もたくさんいらっしゃいます。けれど絵本を聞く楽しみを知っている人が少ないと感じています。絵本はおとなでないと楽しめないものはあっても子どもしか楽しめないものはありません。そして絵と文章を同時に楽しむことでしか読み聞かせでどう伝わるのかはわかりません。ですから読んでもらうことでしか読み聞かせをした時の絵本の魅力が感じられないのです。そのため読み手は聞く楽しみを知る必要があると考えています。絵本を読んでもらう時間をつくって聞く楽しみを知っていくことが読み手として磨かれることだと思います。