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『なつのいちにち』

 今年の夏は長野県の夏らしいと感じています。ここ数年、長野県でも熱帯夜となり寝苦しい夜を過ごしていましたが、今年は夕立によって夜は気温が下がり朝の空気は爽やかで過ごしやすい日が続いています。昼のうだる様な暑さも気温が下がる夜と朝のおかげでなんとか凌げていると感じています。

 この季節になると、『なつのいちにち』はたこうしろう/作 偕成社 を読みたくなります。麦わら帽子をかぶった少年が夏の日差しの中、暑さをものともせずに草の中を走り回ったり虫取りに励む姿が描かれています。抜ける様な青い空、入道雲、光が強いので家の中や木陰とのコントラストの強さ、まさに夏の雰囲気が手に取るように伝わります。私が育った時は熱中症の心配をする時代ではなかったので夏でも外で遊んだ記憶があるせいでしょうか。まるで自分の子ども時代の記憶に直接アクセスしてくる様な懐かしさを感じます。そして少年の躍動感に惚れ惚れします。元気いっぱいの少年自体も眩しい感じがします。最近は熱中症の心配だけでなく安全を考えると、外で遊ぶことを気軽に推奨できないこともあります。けれどこの『なつのいちにち』の様な、なんとも言えない開放感を知らないでおとなになるのはちょっともったいないという気がします。絵本で子どもの世界は広がりますが、体験の代わりにはならないので難しいところです。子ども時代の思い出はイベントだけでなく、こんななんでもない1日の積み重ねが形作っているのだと今頃気がついています。この絵本の世界が夏の記憶として伝わっていくといいなぁと思います。