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絵本が物である以上

 私たちは時代が評価を通した絵本の良さに親しみ、親子三代で読み継いでいくことができるのは幸せなことだと考えています。けれど物としての絵本は経年劣化します。自分の絵本であればその時読んだ記憶が付加されるので経年劣化も味わいになる気がしますが、自分に近しい人以外には魅力的な本として受け入れられるのかは疑問です。加えて絵本はお気にいりであればあるほど劣化します。繰り返し繰り返し読むからです。またおとなになってから手に入れた絵本も子ども時代の絵本ほど読み込んだ訳ではなくても残念ながら劣化します。丁寧に扱ったつもりでもシミがでたり色があせたりします。紙という素材や印刷技術の限界か、はたまた日本の気候のせいか購入した時の状態を保つことは難しいと感じています。

 この様に物として捉えた場合でも絵本の扱いは親子と集団では別物だと思います。親子の場合物語を伝える以外のことも伝わり共有しているのだと思います。経年劣化したこと自体にも価値が生まれるのは親子だからこそです。ボロボロになる程好きだった絵本という親にとっての特別は子どもにとっても付加価値として受け取られるのだと思います。これは親子ならではの楽しみで実際親子三代を地でいく素敵なことだと思います。

 対して私たちは絵本を主役にして子どもたちに物語を渡すのですから、新品に近いきれいな姿の絵本で見て欲しいと考えています。読み慣れた絵本でも新しい物と比べると色の見え方が違って驚くことがあります。そして私たちのしている読み聞かせは、絵本から離れた状態で見てもらうので絵本を楽しむことに関して条件が悪いのです。それもあって絵本の状態が良いものを選びたいと考えています。そのため自分の大切な絵本と読み聞かせ用の絵本は分けて考えた方がいいと思っています。