イメージが先

 ストーリテリングはイメージを固めてそこに言葉を合わせるという言い方をしていますが、テキストからイメージを作っているのだから、言葉が先ではないかという質問をもらいました。確かに言葉からイメージを作り上げているのですが、物語として再現する時はイメージが先だと考えています。ただイメージを固めて言葉をつけるというのは物語を自分のものにする時の手順で実際語っている時はほぼ同時の作業です。語る時はイメージと結びついた言葉を紡ぐと言った感覚でしょうか。

 勉強会などで、イメージが薄いとかイメージが伝わらないという言われ方をするのは、イメージと結びついていない言葉で語っているからです。イメージは実際見ることが叶いませんが、それでもイメージと結びついている言葉なのかどうかは聞いていてわかるものです。どう違うのかといえばイメージと共に語られると物語の展開に苦もなくついていけるのです。戸惑わないし語られたことに対して立ち止まって自分で整理しなくてもいいのがイメージがあるということだと考えています。ストーリーテリングは物語が止まることなく進む中で聞き手に物語を渡しているのでイメージが重要になるのだ思います。

 そのためにストーリーテリングでは物語の進行に必要なものだけが語られますし、イメージも読書するときのような行間を埋めるイメージは必要ないと考えています。例えば登場人物が怪我をしてもその傷の状況が語られたりその痛ましさが語られることはありません。生き死にの場合も同様です。そのため指を切り落とすなど自分で読んだ場合は出血や痛みに恐れをなすような場面でも聞いているとさほどのダメージを受けません。ですからイメージを固める時には物語の進行に必要なことを取捨選択してイメージを作っているのだと思います。そう考えると自分で読書する時とは別の想像力を使っているのかもしれません。大事なのはどう聞こえるかなのだと改めて思います。