· 

教えるのは難しい

 読み聞かせをしたいという高校生のグループと話をしました。子どもが好きで本が好きだから読み聞かせという発想になったと聞き、私たちが始めた頃の読み聞かせが社会的に認知されていることではなかったことを思い出し感慨深いものがありました。けれど現状読み聞かせはコロナ禍との兼ね合いで活動の縮小を余儀なくされていることが多いため、始めるタイミングとしては難しい時期だと思います。そして受け入れてくれる場所が見つかったとしても、マスク着用と聞き手と距離を置かなければならないので、読み手の環境としては難しい状況です。時の運というのもあるのだと振り返って思います。

 そんな中で一番印象的だったのはその学生たちの目的です。それは読み聞かせで子どもたちを笑顔にしたいというものでした。一見文句のつけようがない印象を受けますが、目的だとするとどうしたらいいのかわからないなぁと思いました。読み聞かせは目的が決まると絵本が選べ、読み方が決まると考えているのですが、この目的だと絵本が選べないと思ったのです。きれいにまとまっていますが、よく考えるとこれはキャッチコピーなのだと思います。ブックスタート事業が始まったときに使われた「絵本は心のミルクです」と同類で聞いた人の心を掴み活動を肯定しますが雰囲気を伝えているだけで、目的ではないのだと思います。笑顔の先に何があるのか、ミルクである絵本をどう活用するのかが目的なのだと思います。目的まで踏み込むと似たような活動でも違いが目立つようになります。この違いを意識することが大事だと思いました。

 とはいえ私たちも目的がしっかり定まるまで目的が見えているのに、くっきり捕まえきれず核心の周りをぐるぐるした記憶があります。高校生に要求するのは難しいことなのかもしれないなぁと思いつつ、自分たちの活動を振り返って思いを巡らせました。合わせて学生時代幼稚園に教育実習に行った際、読み聞かせで指導案を書いたら園長先生にねらいがはっきりしないとダメ出しをされ、どうしていいのかわからなかったことも思い出しました。読み聞かせは読み聞かせでしょと思った自分と高校生が重なってどう伝えたらよかったのか考えていますが、答えは見つかっていません。