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つないでいきたい

 絵本の読み聞かせが子どもたちにとって大事なもので、取り入れるべきものだという感覚は、広く社会に受け入れられています。絵本を子どもたちに渡してきた私たちにとってこれは喜ぶべきことですが、最近絵本が消耗品として扱われる傾向が強くなってきたと感じています。原因は子どもが成長と共に楽しむ絵本が変化し、絵本から読み物へと絵本を卒業していく印象がある事と選択肢が豊富なために読む絵本の数をこなすことに惹かれる事ではないかと考えています。

 絵本を卒業していくことに関しては、役割を終えるというよりは毎日読む本として選択されなくなるということだと考えています。絵本を楽しんだ事が土台となり物語を楽しむことを支えます。絵本を楽しんだ経験は血肉となっていて何かの拍子に絵本自体を思い出し、また手にとる事があるものだと思います。好きだった絵本に関して題名が思い出せなくてもこんな話と言える人が多いのはそのためだと思います。

 絵本の数をこなすことに関しては、選ぶときにおとなの感覚が入り込むからだと思います。せっかくこんなにあるのだから同じ絵本ではなく違うものにするよう保護者が子どもに促す場合が多いと感じています。子どもたちの絵本の楽しみ方はおとなとは違います。それこそ暗記するほど同じ絵本を繰り返し楽しむことを厭わないのです。子育てをした人は読むおとなの方がうんざりするほど同じ絵本を読んだ経験が多かれ少なかれあるではないかと思います。繰り返し読んで欲しいと思える絵本があることは子どもにとって幸いなことだと考えています。そして繰り返し読んで欲しい絵本は変化していき必ず次があります。また繰り返し読んで欲しい絵本を排除せずとも読んだ事がない絵本を混ぜ込むことはできます。繰り返し読む本は繰り返し読んで欲しいという子どもの要求とセットです。ただ子どもによっては強い意思表示をしない子もいます。その場合は顔を見ながら繰り返してみてください。集中して聞くようなら繰り返しても大丈夫ですし、途中で飽きてしまうようなら繰り返さない方がいいと思います。

 基本、時代が評価を通す絵本は何度読んでも楽しめる作りになっているからこそ長い間様々な子どもたちに支持されてきたのです。ただ時代が評価を通した絵本なら大丈夫と過信せず、子どもの好みや成長段階に配慮しながら渡していく必要はあります。読み聞かせが浸透した今だからこそ時代が評価を通した絵本を消耗品扱いから守り大切にしていきたいと強く思います。