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赤ちゃん絵本

 おはなしざしきわらしの会が「おはなしと本の会」で読む絵本は時代が評価を通した本を基本としています。何度読んでも読み飽きない内容と物語の世界観の完成度など新しい本にはない味わいがあり物語を受け取る経験をするには最適なものが多いからです。そのため普段絵本はタイトルでその本が思い浮かぶのですが、例外があります。それは赤ちゃん絵本です。赤ちゃんのための読み聞かせもしている関係で、赤ちゃん絵本もかなりの数を読んでいるのですが、赤ちゃん絵本に関しては時代が評価を通したと思える作品が物語絵本ほどたくさんはありません。

 赤ちゃん絵本というジャンルが確立したのは日本でブックスタート事業が始まってからだと考えています。ブックスタートは1992年に英国の教育基金団体「ブックトラスト」が始めたのが最初です。それが2000年の「子ども読書年」に子ども読書年推進会議によって紹介され、2001年4月に本格的に日本で始まりました。各地方自治体が行う事が多いので開始時期はそれぞれの市町村で異なりますが、20年ほど前から普及し始めたものです。福音館書店がこどものともで赤ちゃんを対象にした012という月刊誌のシリーズを創刊したのが1995年ですのでもう少し早い段階で赤ちゃん絵本というジャンルは生まれつつあったのだとは思います。そして赤ちゃん絵本というジャンルが確立する前にも赤ちゃんが楽しむための絵本は出版されていました。代表的なものに『いないいないばあ』松谷みよ子/作 瀬川康男/絵 童心社 があります。これは1967年が初版ですからすでに50年以上子どもたちに支持されている絵本で、この様な作品もあることはあります。けれどこのように出版され続けるものは少なく、新しいものが次々生まれ赤ちゃん絵本のあり方は多種多様な方向に広がっています。赤ちゃんの興味を引くように実験的な色を感じる作品も多く出るジャンルなので、私たちも赤ちゃん絵本に関してはまだ定番の絵本を決めかねている状況です。そして赤ちゃんという手にしたものを口に運んでしまう世代が読むものですから物語絵本より購入される事が多いこともあり、出版社も工夫を凝らしてアピールしている面もあるかと想像しています。けれど『いないいないばあ』が同じような作品がたくさん出版されても生き残ったように、絵本である以上赤ちゃん絵本も時代が評価を通していくのだと考えています。赤ちゃん絵本に関しても時代が評価を通した絵本という視点でもう一度絵本を見直してもいい時期なのかもしれれないと考えています。