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絵本も

 私たちが図書館でおはなしの会を始めた当初より読み聞かせのグループが飛躍的に増え、読み聞かせという言葉が世間一般で認知されるようになりました。けれど様々な目的で様々な読み聞かせが行われている今、読み聞かせをする人と言われることに違和感を感じるようになっています。極端な例をあげれば、ホールで音楽と一緒に読み聞かせをという公演があったりします。最新の技術で大きく映し出された絵本のページと音楽の組み合わせは、もはや絵本を使わなくてもいいのではないかと思わせます。いろいろなジャンルがコラボレーションする事で新しいものが生まれる良さを否定するつもりはありませんが、どれもこれも読み聞かせという言葉で括る事に違和感があります。絵本自体が可能性を秘めた魅力的な素材なため、様々なアプローチが可能で広く愛されているのだとは思います。そしていろいろなやり方を見るにつけ、自分たちのやりたい事や目指している事がはっきりしていく感じがします。

 おはなしざしきわらしの会では絵本とストーリーテリングは同じものだと考えていると繰り返しお伝えしています。その場で見せる絵があるかないかの違いだけでストーリーテリングでも読み聞かせでも同じことをしているのだと考えているのです。私たちは物語を物語のまま肉声で渡す役です。物語からインスピレーションを得て何かを加えて物語を広げる役ではありません。それなら録音でもいいのではないかと言われそうですが、大事なのは肉声です。言葉の力を十二分に発揮させるには肉声が欠かせないと感じています。そして物語は肉声で伝えてこその味わいがあります。肉声の中には語り手の表情や心の動きが加味されているのかもしれませんが、意図的に表情を変えたり感情を乗せることはありません。あくまで言葉を紡ぐ中で無意識に出る事がある程度のものです。ですから私たちにとって絵本を読み聞かせる時も物語を渡しているだけです。物語を渡す者というのが私たちの立ち位置だと思います。