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静かな声

 おはなしざしきわらしの会は、元々大人数の聞き手を想定したおはなしの会をやろうと思ってはいないのだと感じています。特に制限を設けているわけではありませんが聞き手は20人以内のこじんまりとした集団を意識しているような気がします。ですから多すぎるよりは少ない方が語りやすいし伝えやすいと感じるのだと思います。読み聞かせでの絵が見えやすいという問題以外でもこの得意とする集団の大きさには、声の問題が絡んでいると考えています。

 私たちの活動拠点は図書館での「おはなしと本の会」ですが、モデルにし影響を受けたのが家庭文庫でのおはなしの会です。私がふじい文庫の藤井先生の指導を受けていたこと、ストーリーテリングに関する考え方を東京子ども図書館の講演会や出版物から学んだことなどから、家庭文庫こそしていませんが、家庭文庫的な考え方をしていると思います。東京子ども図書館自体も4つの家庭文庫から始まっていますし、私たちの活動の根っこは家庭文庫にあると感じています。

 家庭文庫でのおはなしの会の特徴として聞き手の聞く意欲の高さがあります。自分の意志でわざわざ文庫に通ってくる子どもたちが聞き手なのです。物語を聞きたいと思っているので聞き手も聞きやすさを望み協力してくれます。これは聞き手の経験値が物を言う部分もあるので一概に優劣をつける気はありませんが、物語だけで集中を呼び起こす事ができるのは、家庭文庫の強みだと考えています。そして私たちが子どもたちにできるだけ継続して聞いて欲しいと思う理由がここにあります。このような聞き手には、大きな声は必要ありません。一番後ろの子どもが聞こえている声というのは文庫の発想だと思います。語り手の自然な声は物語をそのままの姿で子どもに渡す事ができ、聞き手である子どもたちもまた自分で読んでいるかのように物語を受け取る事ができるのだと思います。声を張り上げるのではなく自然で静かな声で語られる物語は聞き手の中に染み込む感じがします。