· 

基本に忠実に

 昨日「つむぎの家」という重症心身障がい児者のための公設民営の施設で読み聞かせをしました。思いを言葉等で伝えることが困難な利用児者にしっかり向き合い、おひとりおひとりの幸せ感に寄り添う支援を謳っている施設で、施設利用者の方と職員の方が二人一組で一緒に絵本を楽しむという、おはなしざしきわらしの会としては変則的な読み聞かせの場となっています。「つむぎの家」は開設された当初からおはなしざしきわらしの会に読み聞かせの依頼を頂いていてその時は私が毎月伺っていたので記憶にあった建物と実物の違いに時間の流れを感じ自分が伺うのは久しぶりなのだと実感しました。

 そして久しぶりに伺って感じたのは、以前はあまり意識していなかった職員の方の存在の大きさでした。私たちは利用者さんが絵本をどう捉え感じているのかを捉えることは難しく、読んでいる間に聞いてくれているという実感が持ちにくい現場です。けれど普段から利用者さんに寄り添っている職員の方たちは利用者さんに声をかけながら表情を引き出しどう感じているのかを共有していきます。子ども向けの読み聞かせに読み手が複数で伺った場合、読んでいない者は子どもの集中力をサポートするために聞き手に徹して絵本に集中します。おとなの集中力が集団で聞く場合の推進力になるからです。けれどつむぎの家の場合は利用者さんと職員の方のやりとりを観察する事が大事だと思いました。絵本に合わせてどんな言葉をかけ、どんな表情を引き出しているのかが絵本を選ぶヒントになります。どの程度見えていてどの程度聞こえているかも正確に計ることのできない利用者さんたちです。身体を起こしていること自体も負担になるような方や吸引が必要な方もいらっしゃいます。けれどちゃんと利用者さんひとりひとりが絵本を楽しめるよう職員の方がサポートしている様子に背筋が伸びる思いがしました。私たちは絵本の力と職員の方の力を信じて、基本に忠実に絵本を選び読むだけだと思いました。