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たまには

 お盆の時期とは思えないほど雨が降り続いています。日が射さないと先日までの猛暑が嘘のように気温が下がり、肌寒さを感じるほどで季節を見失う感じがしています。雨降りなので家の中での楽しみを見つけたいところですが、まだ一昨年の台風の記憶が新しく長雨は緊張を呼び起こしリラックスできない感じです。本来なら人が集い楽しい時期のはずがコロナ禍で合いたい人と会えない上、危機感を感じるようなお天気とまさに弱り目に祟り目といった感じで気持ちが沈みがちになります。

 こんな気分でいたら『子どもが孤独(ひとり)でいる時間(とき)』エリーズ・ボールディング 著 , 松岡享子 訳 こぐま社 を思い出しました。これは子どもと孤独の関連性を整理した本です。孤独というと一般的にマイナスのイメージが強く、身寄りのないこと、仲間がいないこと、人から離れて孤立していることなどが思い浮かびます。そのためこの寂しいイメージと子どもを結びつけて考えることはなく、どちらかというと孤独から遠ざけようと考えます。けれど著者は孤独に実りを見出し、人間が孤独でいる時にしか起こらないある種の内的成長があると書いています。孤独は、自由であること、内へ向かうこと、自分自身を発見することのために欠かせない条件なのだそうです。そしておとなだけでなく子どもも生活の中に孤独(ひとり)でいる時間(とき)が必要だと説いています。この孤独を「ひとりでいること」と捉えた松岡さんのセンスが光ります。日本語の「孤独」と「ひとりでいること」では印象が随分違います。「ひとりでいること」と訳したことで内容の説得力が上がっている気がします。100ページほどの小冊子です。宗教色はありますが、それを超えて私たちに訴えるものがあると感じています。子どもと関わる私たちもたまにはこういった本を読んでみると新しい発見があるかもしれません。